「オビ、ありがとう」


何のてらいもなく、いつでも素直に気持ちを言葉にする彼女。
その声、笑顔、真っ直ぐな性格、凛とした生き方、彼女の全てが大切だ。溢れ出しそうな想いを必死で堪えていた時もあった。その想いは、今でも消えてなくなったわけではない。時々動いては、小さく痛む。

けれど、それ以上にーー


「オビ、そろそろ行くぞ」
「はい、主」


返事をして、自分より小さいーーと言うと間違いなく怒られるが、その後ろ姿を追う。

参ったな、と正直思った。
敬愛、なんて柄じゃなかったのに。

この人の、生きていく道を見ていたい。彼女と同じぐらいか、それ以上に真っ直ぐに生きるその姿勢に、惚れたも同じだ。そして自分に向けられる偽りのない信頼に、応えずにはいられなかった。

らしくない場所。らしくない自分。
けれど、決めつけていた、らしい自分でいた時よりよほど、今の自分は気分がいい。

彼女を想う気持ちは変わらず胸の中にある。けれどそれ以上に、主への敬愛の気持ちが大きい。自分をこうまで変えた主には、完敗だ。

願わくば、この場所でこれからも、ずっとーー。



＊＊＊


title：確かに恋だった

オビ×ゼンっていう話ではありません！(笑)
なんていうかオビって、白雪を想う気持ちを超えるぐらい、ゼンに対して尊敬というかそういう気持ちでいるんじゃないかな…と思うんです。なんかうまくまとまらなかったけど、そんなお話でした。